最初の1回は、直行便で行ける範囲から
子連れの海外は、大人だけの旅とは別の競技です。夫婦ともバックパッカーだった家庭と、これから始める家庭では、経験値が違いすぎる。こちらはレベル1で棍棒を持ってスライムを倒しに行く感覚なのに、向こうは強くてニューゲームの状態です。
だから最初の行き先は、乗り継ぎなしで着けるところに絞ります。名古屋からシンガポールなら7時間ほど。ベトナムなら5時間。いきなり乗り継ぎのある10時間はハードルが高い。乗り継ぎ自体をしたことがない人も多く、それだけで疲れます。
背伸びをしない
もうひとつ繰り返されていたのが、ぎりぎりの日程を組まないことでした。韓国と台湾しか行ったことがないのに、子連れでいきなりスペインへ行かない。
ここで断りが入ります。5歳と3歳を連れてスペインへ行った例があるけれど、それは学会があったからです。学会費とホテル代は医局が負担し、家族全員が泊まれる部屋でそれなら安いと認めてもらえたので、妻と子どもの航空券だけを自分で出した。学会に出ている間は、奥さんが子どもを連れて観光しています。そもそも夫婦は南米で出会っているのでスペイン語が通じる。参考にしないでほしい、と本人が言っていました。
旅慣れとは、何のことか
では、その差はどこにあるのか。分かりやすい例が出ていました。
アイジュ
ゆー温めようとして木の素材の上に置いてしまい、慌てて消したものの黒焦げになった。レセプションに申し出て、保険で払うと伝えたら250ドルほど請求された。そこから日本の保険会社に電話をして、レセプションと話してくださいと繋ぎ、請求書を揃える。これを誰の助けも借りずに英語でやります。
旅慣れとは、事故が起きないことではありません。飛行機が遅れても、荷物が消えても、次に何が起きるか分かっている状態のことです。
そしてこれが、子どもに直接効きます。10時間のフライトでも子どもが平気だったのは、親の緊張が伝わってこないからでした。
旅行は特別なものだ、と教え込む
子どもに旅を好きになってもらうための、身も蓋もない方法も紹介されていました。旅行中はお菓子が食べ放題。旅行中はYouTubeを見ていい。パパとママは旅がないと生きていけないから、あなたたちにも旅を好きになってもらいます、と言って。
その代わり、観光地だけを回るわけではありません。現地の公園や動物園にも普通に連れて行きます。学会で2、3日抜けたあと、動物園で何を見たのかと聞いたら、パンダ、と返ってきたそうです。スペインまで来てパンダかい、と。
昔より便利になったね、と言いながらローカルの食堂に子どもを連れて入っていく。その積み重ねが旅慣れになります。
言葉が通じない、最初の友達
この記事でいちばん紹介したい場面が、タンザニアのザンジバルです。アラブ商人が作った街で、かつてオマーン帝国の首都でもあったので、アフリカでありながらイスラム教の土地になります。
そのリゾートのプールで、オランダ人の男の子が娘さんと息子さんに声をかけてきました。ルーカスという名前で、年は同じくらい。親が間に入って通訳していたそうですが、そんなものは途中でどうでもよくなります。3人でずっとプールで遊んでいた。
ルーカスの両親は、遊びたいと言い出して申し訳ない、という様子で来たそうです。うちの子は英語ができないんですけど、と伝えた記憶もある。それでも子どもが勝手に遊んでくれるなら、親としてはありがたい。
話には続きがあります。2年ほど前、家族であのときは面白かったねと振り返っていたときのことでした。
アイジュ
ゆーいまの私なら全部喋れるから、あのときルーカスが何を言っていたのかをものすごく知りたい。そう言ったそうです。オランダの子は8歳9歳で英語がすらすら出てきます。言語が近いからで、通じないのは一方通行でした。
語学の経験というより、彼女たちにとって言葉の通じない最初の友達だったのだと思う、という受け止め方でした。英語塾に何年通っても、この一日は作れません。
連れて行く順番
まとめると、こういう順番になります。
- 直行便で5時間から7時間の範囲。台湾、韓国、ベトナム、シンガポールあたり
- 日程に余白を作る。詰めた行程は、子どもの体調ひとつで崩れる
- 観光地と同じくらい、現地の公園や食堂に行く
- 慣れてきたら乗り継ぎ。ヨーロッパはそのあと
そして、こういう世界があると知っている状態で育つこと自体が大きい、とも話していました。カルチャーショックのある場所で子育てできたのは良かった、と。漢字の練習もさせないといけないし、日本の文化も教えないといけない。それでも、です。
子どもが覚えているのは、たいてい親が用意した予定の外側にあります。