ベトナム・ハノイの私立病院で働く日本人医師、アイジュ。通勤路は線路の上、隣では毎晩のように宴会の声が響く。ポッドキャスト「医局の外で会いましょう」で語られた海外勤務の実録から、日本の病院との違いが際立つ場面を再構成しました。
場面1|医師が5人同時に休みを申請した日
日本の病院なら、まず通らない申請です。ハノイの病院で実際に起きたときは、こう決着しました。早い者勝ちで3人までが同じ日程で休む。残る2人は「じゃあ他の日に自由に取るよ」で終わり。誰も謝らないし、誰も責めません。
アイジュ回らないならシステムが悪い。医師個人の頑張りで埋める話ではない。まずいのは、回らない仕組みを作った側。この前提が共有されているから、休むことに罪悪感が発生しません。
場面2|人が足りないなら、雇って価格に乗せる
私立病院では、人手が足りなければ人を雇い、その分を医療費に転嫁します。日勤・準夜・夜勤の3シフト制で人員を配置し、できないなら増やす。ビジネスとして当然の判断です。公立病院でそれができない場合はどうなるか。患者が待ちます。「それがこの国のシステムだから」で終わりです。
ゆー
アイジュ場面3|株価を見ながら通訳する秘書
アイジュの通訳秘書は、仕事中に株価をチェックします。注意したことは一度もありません。理由は明快で、通訳の仕事はきちんとできているからです。「私は仕事をしているじゃない」と言われたら、返す言葉がない。求められた成果を出していれば、過程は問わない。この感覚は、勤務態度そのものを評価しがちな日本とは根本から違います。
副業禁止という日本のルールも、海外の同僚には通じません。「なんで禁止なの?」の次に来る反応は決まって「どうせ誰も守らないでしょ」。ルールの捉え方の違いが、働き方の自由度の違いに直結しています。
場面4|「辞められない」と言ったら、こう返された
週6、週7で働いて疲れ果てた日本の医師が「辞められないんだ」とこぼしたら、海外の医師はどう反応するか。実際の答えはこうです。
アイジュ
ゆー海外で働いて、良かったこと
- 外来の患者数は日本の医局時代の半分ほど。オンコールも当直もない契約
- 年5〜6週間の休暇が取れる。1週間の旅行に「さよなら」で出発できる
- 毎日が海外旅行のような刺激。人生69カ国目の旅も勤務と両立できた
- 権利と契約がはっきりしているので、自分の人生の設計がしやすい
逆に、日本の医療の丁寧さ、清潔さ、患者への細やかさは、外に出て初めて分かる宝でもあります。どちらが上という話ではなく、当たり前は一つではないという話です。
外の世界を知ると、選択肢が増える
海外で働くことを勧めたいわけではありません。ただ、病院が回らないのは自分のせいではないという発想、休む権利は使っていいという前提。これを知っているだけで、日本での働き方の選び方も変わります。あなたの「当たり前」は、世界のどこまで通用するでしょうか。