「医局を辞めたい」と思ったとき、最初に考えるべきこと
医局を辞める決断は、多くの医師にとって医師人生で最も重い選択の一つです。ただ、辞めたい気持ちがあるのに動けない理由の大半は「手順がわからない」「タイミングを逃すのが怖い」という2点に集約されます。
ポッドキャスト「医局の外で会いましょう」で、消化器内科から医局を離れたゆー医師はこう振り返っています。医局時代は朝8時から夜10時、土日のどちらかは当直か当番で、実質週6勤務が当たり前だった。忙しすぎると、辞めるかどうかを考える時間すら取れなくなる、と。
まずは辞める前提の情報を整理することから始めます。
アイジュ
ゆー医局を辞めるベストなタイミングは何年目か
専門医取得後が最も潰しが効く
結論から言えば、雇用される立場で働き続けるなら専門医を取得してから辞めるのが最もリスクが低い選択です。同ポッドキャストでも、専門医を持つ医師ほど転職市場での選択肢が広く「潰しが効く」という点で意見が一致しています。
近年の診療報酬改定では、専門医の有無で算定できる項目が変わる方向に動いています。国が専門医を持つ医師を優遇する流れは今後強まる可能性が高く、辞める前に取れるものは取っておく判断が現実的です。
辞めるべきタイミングの見極め方
- 専門医・学位など、その医局でしか取れないものを取り終えたとき
- 次のキャリアの方向性が自分の中で定まったとき
- 後任への引き継ぎが年度替わりで自然にできる時期(多くは3月末)
- 心身の限界が近く、これ以上続けると判断力が落ちると感じたとき
最後の項目だけは例外です。健康を損なうレベルまで来ているなら、年目やタイミングを待つ必要はありません。
円満に辞めるための具体的な手順
ステップ1:直属の上司に口頭で伝える
最初にメールや退職代行を使うと角が立ちます。まず医局長や指導医に直接、時間を取ってもらって口頭で意思を伝えます。
ステップ2:退局の意思をメールで正式に残す
口頭で合意が取れたら、記録として簡潔なメールを送ります。感情的な理由は書かず、事実と感謝に絞るのが円満退局のコツです。
- 退局を希望する時期を明記する
- これまでの指導への感謝を一文添える
- 引き継ぎに協力する意思を示す
ステップ3:関連病院・人事への影響を確認する
医局は関連病院への派遣人事を握っています。辞めることで派遣先にどう影響するかを事前に把握し、後任の目処が立つよう配慮すると、その後の人間関係が保たれます。
「辞められない」と感じる本当の理由
手順がわかっても動けない医師は少なくありません。その背景には、日本特有の「空気を読む」文化があります。
海外の私立病院で働くアイジュ医師は、この感覚を鋭く指摘しています。周りの空気を読んで辞められないという状態は、海外の医師から見れば「なぜ辞める権利を使わないのか」と不思議がられる。辞める権利があるのに使わなかったのは、突き詰めれば自分の選択でしかない、と。
病院が回らなくなるのは個人の責任ではなく、回らない仕組みを作った側の問題である。この発想の転換が、辞める罪悪感を軽くしてくれます。
専門医なしで辞める場合のリスク
事情があって専門医取得前に辞めるケースもあります。その場合に想定されるリスクを正直に挙げておきます。
- 常勤の転職先で選択肢がやや狭まる
- 将来クリニックを開業する際、標榜科目の選択に制約が出ることがある
- 診療報酬上の算定で不利になる可能性がある
ただし、起業や経営、産業医など臨床以外の道を選ぶなら、専門医の有無はさほど重要ではありません。自分が進む方向によって、このリスクの重さは大きく変わります。
アイジュ
ゆー辞めた後に後悔しないために
辞めた医師の多くが口を揃えるのは「もっと早く動けばよかった」という一点です。週6で働いていた頃は視野が狭くなり、辞めるという選択肢そのものが見えていなかった。時間ができて初めて、別の生き方があると気づいたと言います。
辞めるかどうかで迷っているなら、いきなり転職を決める必要はありません。まず有給を1日使い、何もしないで自分のキャリアを考える時間を作る。その1日が、次の10年を変えるかもしれません。あなたにとって、医局は本当に残る場所ですか。