「ゼロで死ね」という挑発
『DIE WITH ZERO』の主張は一行で言えます。資産を使い切って死ね。貯め込んだまま死ぬのは、その金を稼ぐために費やした人生の時間を無駄にしたのと同じだ、という挑発です。
著者のビル・パーキンスはヘッジファンドのトレーダーで、金の増やし方ではなく使い方の本を書きました。だからこそ、稼ぐ力はあるのに使う時間がない職業、つまり医師にこそ刺さります。
核心は「思い出の配当」
本書で最も重要な概念が、思い出の配当(メモリー・ディビデンド)です。経験に使った金は、その瞬間だけでなく、後から思い出すたびに喜びを生み続ける。つまり経験への支出は消費ではなく投資であり、早く投資するほど配当を受け取る期間が長くなる、という考え方です。
ポッドキャスト「医局の外で会いましょう」のアイジュ医師には、この配当の実例があります。18歳での世界一周です。
アイジュ
ゆー医師がこの本を読むべき3つの理由
1. 稼ぐ力と使う時間のアンバランスが極端な職業だから
週6勤務と当直の生活では、収入が増えても使う時間がありません。気づけば口座の数字だけが増え、経験は増えていない。本書はこの状態を「人生の時間の切り売り」と呼び、真正面から問いかけてきます。
2. 経験のタイミングに「旬」があると教えてくれるから
子どもと遊べる時期、バックパッカーができる体力、親と旅行できる時間。どれも期限つきです。「いつか」と先送りした経験は、多くの場合そのまま消えます。
3. 貯める目的を問い直させてくれるから
資産形成の本を読んだ後にこそ、この本の価値が出ます。増やす技術と使う哲学はセットです。何のために増やすのかが決まっていない資産は、ただの数字です。
億り人医師は「ゼロで死ぬ」に同意するか
では、実際に資産を築いた医師は本書に全面同意なのか。答えは、半分イエスです。
経験への投資が最強のリターンを生むという点は、実体験として完全に同意。一方で「働く時間を最小化せよ」という含意には与しません。アイジュ医師はストック収入が育った今も臨床を続けています。労働が嫌いなら減らせばいい。でも、労働そのものが好きなら、働き続けることも豊かな使い方です。ゼロで死ぬことより、自分の美学で生きることが先に来ます。
アイジュ
ゆー今日からできる、本書の実践
- 「いつかやりたいこと」を書き出し、体力的な期限を横に書く
- 今年の予算に「経験への投資枠」を先に確保する
- 子ども・親と過ごせる残り回数を、一度計算してみる
- 貯蓄額の目標だけでなく、使い道の目標を1行書く
結論|貯める本より先に、これを読む
資産形成の入り口に立つ医師にこそ、増やす本より先に本書を勧めます。目的が定まってから増やし方を学ぶ方が、手段に振り回されずに済むからです。読み終えたら、次は医師の資産形成の始め方へ。他に読むべき本は医師が読むべきお金の本ベスト5にまとめています。あなたが最後に「経験」に金を使ったのは、いつですか。