「法人化=節税」だけで考えると失敗する
医師の法人化というと、真っ先に節税が語られます。たしかに税率の違いは法人の利点ですが、それだけを目的に作った法人は、維持コストと事務負担で後悔しがちです。法人は事業を育てる器であって、節税グッズではありません。
ポッドキャスト「医局の外で会いましょう」のゆー医師は、勤務医として働きながら法人を経営しています。その実感を踏まえて、検討の順番を整理します。
アイジュ法人は作ること自体が目的ではありません。何の事業を入れる器なのかが先ですよ。順番を間違えると、維持費だけ払う箱になります。
ゆー僕は副業の収入が育ってきた段階で法人にしました。節税というより、事業を続けるための仕組みという感覚ですね。
医師が法人化する主なメリット
- 個人より広い範囲の支出を、事業の経費として整理できる
- 所得の受け取り方(役員報酬など)を設計できる
- 家族に業務を手伝ってもらう場合、報酬の形で分配できる
- 事業としての信用ができ、契約や取引がしやすくなる
- 個人と事業のお金が分離され、資産管理が明確になる
ポイントは、どれも「事業収入があること」が前提だという点です。給与しかない勤務医が法人を作っても、入れるものがありません。
見落とされがちなデメリット
維持コストが毎年かかる
法人は赤字でも税負担が発生し、税理士費用や登記などの実務コストも続きます。収入規模が小さいうちは、コストが利点を上回ります。
事務負担が増える
帳簿、決算、社会保険の手続き。臨床の合間にやるには重く、外注すればその分の費用がかかります。
お金を自由に引き出せなくなる
法人のお金は法人のものです。個人の財布と混ぜられなくなる規律は、メリットであると同時に不自由でもあります。
検討を始めるタイミングの考え方
金額の線引きは状況によって変わるため、断定はしません。ただ、考える順番はこうです。
- ステップ1:給与以外の事業収入(執筆、講演、産業医の直接契約、コンテンツなど)があるか
- ステップ2:その収入が単発ではなく、継続して育っているか
- ステップ3:維持コストを払っても残る規模になってきたか
- ステップ4:ここまで揃ったら、税理士に自分の数字で試算してもらう
逆に言えば、まだ副業収入がない段階で悩む必要はありません。先にやるべきは、法人に入れる事業を作ることです。
MEMBERSHIP
法人化のリアルは、コミュニティで
法人の実際の数字や運用の細部は、公開の場では話しにくいテーマです。「医局の外で会いましょう」のメンバーシップでは、限定記事やオフ会で法人化を扱っています。
メンバーシップを見るよくある勘違い
- 「勤務医は法人を作れない」→ 給与を法人に入れることはできませんが、副業の事業収入を法人で受けることは可能です
- 「法人にすれば何でも経費になる」→ 事業と関係ない支出は経費になりません
- 「作れば自動的に得をする」→ 得かどうかは収入の構成次第で、試算しないと分かりません
アイジュまず事業を作る、育ったら器を考える。この順番だけ守れば、大きな失敗はありませんよ。
ゆー最後は必ず、自分の数字で税理士さんに試算してもらってください。一般論より、あなたの場合どうかがすべてですからね。
器の前に、中身を育てる
法人化は医師のキャリアの選択肢を広げる道具です。ただし順番は、事業が先、法人が後。いま副業の種がないなら、法人の勉強より先に、複利になる仕事を1つ始める方が近道です。あなたには、法人に入れたい事業がありますか。